大学の研究者紹介ページだけでは、伝えきれないことがあります
研究者について知りたいとき、多くの人が最初に見るのは大学や研究機関のプロフィールページです。
所属、役職、研究分野、論文、経歴。
研究者としての基本情報を確認するには、とても重要な場所です。
ResearchmapやGoogle Scholar、LinkedInなども、それぞれ研究者の活動を知るための有力な情報源になっています。
一方で、企業や大学外の人が研究者を探している場面を考えると、少し違う課題が見えてきます。
その研究者が、
- どのような課題について相談できるのか
- 研究成果をどのような領域に応用できるのか
- 企業との共同研究に対応できるのか
- どのようなテーマで講演や助言ができるのか
- 最近、何に取り組んでいるのか
まで、一つのページだけで理解できるとは限りません。
研究者本人にとっては十分な情報でも、社会の側から見ると、
「専門分野は分かった。しかし、何を相談できる人なのか分からない」
という状態が起こります。
大学のプロフィールページには役割がある
ここで大切なのは、大学の研究者紹介ページが不足しているという話ではありません。
大学のWebサイトには、大学のWebサイトとしての役割があります。
所属機関として、
- 氏名
- 所属
- 職位
- 研究分野
- 教育・研究実績
- 論文
などを正確に掲載することが重要です。
Researchmapには研究成果を体系的に蓄積する強みがあります。
LinkedInには、人との接点をつくり、活動を継続的に発信できる強みがあります。
どれか一つが正しく、ほかが不要ということではありません。
問題は、それぞれの情報が分散していることです。
研究者自身の「公式情報源」という考え方
そこで考えたいのが、研究者自身の公式情報源を持つことです。
これは、大学やResearchmap、LinkedInの代わりを作ることではありません。
むしろ、それぞれにある情報をつなぎ、「この研究者について知りたいなら、まずここを見る」という中心をつくる考え方です。
例えば、研究者自身のWebサイトであれば、Profile、Research、Social Implementation、Publications、Achievements、News、Contactといった情報を、一つの場所に整理できます。
「研究分野」と「相談できること」は違う
企業側から見ると、この違いは特に重要です。
例えば、
AIを活用した画像解析を研究しています。
という情報だけでも、研究分野は理解できます。
しかし、企業担当者が知りたいのは、その知識を、自社のどんな課題について相談できるのかです。
例えば、
AI画像解析技術を活用し、製造工程の検査や品質管理、画像データを用いた異常検知などについて、共同研究・技術相談に対応できます。
と書かれていれば、企業側は自社の課題との接点を考えやすくなります。
研究内容そのものを変えるわけではありません。情報の入口を変えるだけです。
Before / After
Before
高分子材料の耐久性について研究しています。
After
高分子材料の劣化・耐久性評価に関する研究知見を活かし、製品寿命の評価、材料選定、耐久試験設計などについて企業との共同研究・技術相談に対応しています。
研究者の専門性を浅くするのではなく、専門性への入口を社会側から理解できる言葉にするということです。
自分で管理できることも大きな意味を持つ
研究活動は変化します。新しい論文、共同研究、講演、受賞、新しい研究テーマ、企業とのプロジェクト。
自分自身のWebサイトであれば、研究活動の変化を継続的に蓄積することができます。
数年経ったとき、そのWebサイトは単なるプロフィールではなく、研究者として何をしてきたのかを示す記録になります。
SNSだけでは代替できない理由
LinkedInをはじめとするSNSは、新しい研究成果、講演、イベント、考えていることなどを発信するには非常に向いています。
ただしSNSは基本的に、情報が時間とともに流れていく場所です。
Webサイトは、Profile、Research、Achievementsなどを整理し、情報を蓄積する場所として機能します。
そのため、SNS=接点、Webサイト=情報の拠点と役割を分けると分かりやすくなります。
Researchmapとも競合しない
Researchmapは研究者にとって重要な研究情報基盤です。
一方、個人Webサイトでは、なぜこの研究をしているのか、社会でどう活用できるのか、企業から何を相談できるのか、どのような共同研究を考えているのかなど、研究者自身の文脈で情報を編集できます。
したがって、Researchmapと個人Webサイトは競合するものではなく、相互に補完するものと考えた方が自然です。
Webサイトは「名刺」ではなく「情報基盤」
研究者サイトを、オンライン名刺として考えると役割が小さくなってしまいます。
これからの研究者Webサイトは、研究者自身の情報基盤として考えた方がよいでしょう。
研究成果が増えれば更新する。活動が増えれば蓄積する。企業との接点が生まれれば事例として残す。SNSで情報発信すれば、その詳細をWebサイトへ蓄積する。
そうすることで、時間とともに研究者自身の情報資産が形成されます。
研究成果を、社会が理解できる入口へ
研究者の専門知識は、それだけで価値があります。
しかし社会との接点を考える場合、専門知識が存在することと、その価値が社会側から理解できることの間には距離があります。
Webサイトは、その距離を埋める手段の一つです。
大学プロフィール、Researchmap、LinkedInなどを活用しながら、その中心に研究者自身が管理する公式情報源を持つ。
それによって、研究内容を探している人ではなく、研究者に相談したい人にも届く情報へ変えていくことができます。