研究者サイトは、情報を増やせば伝わるわけではありません
研究者のWebサイトを作ろうとすると、経歴、研究テーマ、論文、著書、受賞歴、講演、プロジェクトなど、掲載する情報を集めることになります。
どれも重要な情報です。
しかし、それらをそのまま並べただけでは、この研究者は何を研究しているのかは分かっても、自分は何を相談できるのかまでは伝わらないことがあります。
研究者サイトで重要なのは、情報量ではなく、情報の順番と役割です。
まず考えたいのは「誰が見るのか」
研究者自身にとって分かりやすいWebサイトと、外部の人にとって分かりやすいWebサイトは、必ずしも同じではありません。
閲覧者には、他大学の研究者、企業担当者、自治体、メディア、学生、共同研究先、講演依頼を検討している人などが考えられます。
その中でも企業担当者は、研究者のページを見ながら、自社の課題と関係があるか、相談してよい相手か、実績はあるか、信頼できる研究者かを短時間で判断することがあります。
そのため、研究者側の分類だけでなく、閲覧者側の知りたい順番も考える必要があります。
1. 最初に「何を研究している人か」を伝える
Webサイトの最初で必要なのは、研究者の専門性を一言で理解できる情報です。
例えば、
高分子材料研究
だけでは範囲が広すぎます。
一方、
高分子材料の劣化・耐久性評価を研究し、製品寿命や材料選定への応用に取り組んでいます。
とすれば、専門分野と研究対象が同時に分かります。
まず、「何の研究者なのか」が分かる状態を作ります。
2. 研究内容を「テーマごと」に整理する
研究内容を一つの長い文章にまとめると、専門外の人には理解しにくくなります。
そこで、Research Theme 01、02、03のように分け、何を研究しているか、なぜ研究しているか、どのような方法を使うか、何に活かせる可能性があるかを整理します。
これにより、閲覧者は自分の関心に近い部分だけを確認できます。
3. 論文と「社会での意味」を分けて掲載する
研究者サイトでは、論文一覧は重要です。
しかし、論文タイトルだけでは専門外の人に意味が伝わらない場合があります。
そこで、PublicationsとSocial Implementationを分けて考えます。
Publicationsでは、研究成果そのものを正確に掲載する。
Social Implementationでは、その研究が社会や企業のどのような課題と接点を持つのかを説明する。
この二つを分けることで、学術的な正確さと社会からの理解を両立しやすくなります。
4. 実績は一覧だけでなく「文脈」を伝える
例えば、株式会社○○との共同研究という実績があったとします。
公開可能な範囲で、研究テーマ、相手の課題、研究者が担当したこと、得られた成果を説明すると、実績の意味が伝わりやすくなります。
単なる実績一覧から、研究者の価値を理解できる事例へ変わります。
5. 「相談できること」を独立した情報にする
研究内容の中から、企業側が相談可能なテーマを読み取ってくれるとは限りません。
そのため、Consultation Topicsとして、画像解析技術に関する相談、製造工程の異常検知、AI導入可能性の検討、研究開発データの分析、共同研究テーマの検討などを独立させてもよいでしょう。
ここまで明確になると、企業側は、自社の相談も対象になりそうだと判断できます。
6. 情報を「深さ」で分ける
Webサイトでは、すべてをトップページに掲載する必要はありません。
Level 1をトップページ、Level 2をProfile / Research、Level 3をPublications / Achievements、Level 4をSocial Implementation、Level 5をContactと考えることができます。
この情報階層を作ることで、詳しく知りたい人だけが深い情報へ進めます。
研究者サイトの基本構造
TOP
研究者の専門性と現在の活動。
PROFILE
所属・経歴・研究者としての背景。
RESEARCH
研究テーマの詳細。
SOCIAL IMPLEMENTATION
社会や企業との接点。
PUBLICATIONS
論文・著書など。
ACHIEVEMENTS
共同研究・講演・受賞など。
NEWS
最近の研究活動。
CONTACT
共同研究・技術相談・講演などの窓口。
重要なのは、ページ数そのものではありません。それぞれの情報に役割を持たせることです。
「全部載せる」より「見つけられる」こと
研究者は多くの情報を持っています。
だからこそ、Webサイト制作では、何を載せるかだけでなく、どこに載せるかを考える必要があります。
情報の優先順位を付けることで、専門性が伝わりやすくなります。
更新されることも情報設計の一部
研究者の活動は止まりません。
新しい論文、研究成果、講演、共同研究、メディア掲載など、そのたびにWebサイトを更新できる構造になっていることも重要です。
つまり研究者サイトでは、公開時点の完成度だけでなく、更新し続けられる設計も必要です。
SNSやResearchmapは外部情報源としてつなぐ
研究者サイトですべての情報を一から管理する必要もありません。
Researchmap、Google Scholar、ORCID、LinkedIn、大学プロフィールなどへリンクできます。
研究者サイトを中心にして、必要な外部情報源をつなぐという考え方です。
Webサイトは「情報の置き場」ではない
重要なのは、閲覧者が次に何を知りたいかを考えて情報を並べることです。
研究者の専門知識を、見つける → 理解する → 信頼する → 相談するという流れに合わせて設計する。
それが研究者Webサイトの情報設計です。
まとめ
研究者の専門知識をWebで伝えるためには、
- 何の研究者なのかを最初に伝える
- 研究テーマを整理する
- 論文と社会での意味を分ける
- 実績に文脈を加える
- 相談できることを明示する
- 情報を深さで分ける
ことが重要です。
Webサイトの目的は、研究者が持っているすべての情報を並べることではありません。
必要な人が、必要な情報へたどり着ける状態をつくること。
その結果として、研究者の専門知識が社会から理解されやすくなります。